光は伝播するということ|キングダム「加冠の儀」感想

※ネタバレ注意

「キングダム」426・427話
(単行本39・40巻)に出てくる
加冠の儀のシーンで、

嬴政(えいせい)が、
人間の持つ本質は「光」である
と言っていたことについてです。

今回はこの「光」を
掘っていきたいと思います。

なんとなくしっくり来るから
「光」なんだろうな、

と読んだ当初は
漠然と思ってたんですが

キングダム全体の文脈で
考えてみると
この「光」という言葉が
選ばれたのは必然と言いますか、

結構理由があるんだなと
思い直しましたので
そこを共有します。

加冠の儀で語られる「光」

加冠の儀のシーンは嬴政の
見せ場とも言えるところで
キングダム全体の中でも
ひとつの山場です。

呂不韋から中華統一の願望
について問われ、それに対して
胸の内を語るシーンです。

幼い頃、紫夏との出会い
を経て気づいた人の本質
について語られます。

嬴政によると人の本質は
「光」で、人の中心には
この光が宿っている
とのこと。

まったく赤の他人である
にもかかわらず
殺されそうなところを
紫夏に助けられたり、

王騎将軍や麃公将軍たちが
自分の中の光を必死に
輝かせていたところを
想いながら

各々自分の中にある
光を輝かせていたことを
語ります。

初め読んだときは
「おおーっ!」と
ただただ感動しただけ
でしたが

この度アニメ4期がどうやら
加冠の儀までということで
じっくり読んでみたら、

「何で“光”なんだろう?」

という疑問が湧いてきました。

ここは愛とか魂とか心とか…
そういう言葉でもよかったのに
敢えての光なんです。

光の本質

人間の本質は光、とのことですが、
では光の本質は何でしょうか?

ずばり

「伝播する」

ってところが本質です。

光源からその先へ「伝播する」
というのが光の本質です。

おまけに、
光は掴むことはできません。

あるところから別のところへ
伝わることであって、
掴んだり、囲ったり

一か所にとどまるのではなく
「伝播する」ことが光の
本質です。

おそらくですけど、

原先生は
この光の本質も考慮して
いたんじゃないかと
思うわけです。

だからこそ、
「人間の持つ本質は光である」
の次に語られたのが

「そしてその光を次の者が受け継ぎ
さらに力強く光り輝かせるのだ」

です。

もう完全にここだと
思っていて、

原先生の凄いところは
「人間の持つ本質は光だ」

で終わらせてもいいところを
あえて

「次のものに引き継がれていく」

ってしたところです。

これはキングダム全体の流れ
においても通底するのですが、
意志を継承するというところ
がここでも強調されてきます。

しかも継承されることで
よけい光るとしたところです。

「人間の持つ本質は光である」
ってところも大事ですけど

その光が「継承される」ってことが
最大のポイントだと
思うんです。

掴むことができない
光をよりっそう光らせるためには
どうすればいいかというと

次のものに引き継ぐ

ということをするしかないんです。

掴みとれないその人の光は
人から人へパスされる
ことでしか

光らせ続ける
ことができないんだって
ところがミソです。

こんな感じで、
「キングダム」という作品
そのものが持っている構造を

この加冠の儀のシーンで
全面的に出してるんだな
と思いました。

次の代へ引き継ぐ

さらに話は続いて、
最後に嬴政は自分の代で
中華を統一することによって、

その先人が争わない
世界をつくると言っています。

この姿勢も実は
「継承する」ってところ
とかかわってくる姿勢で、

あえて次の代に
「やるべきことを残しておく」
ということを嬴政は
やっているんだと思います。

武力で統一することが
最適解かというと
そんなこともないと思いますが、

ここでのポイントは
自分が中華統一した後で

その後を自分の代でやらずに
次に「残しておく」。

この姿勢も同時に
描きたかったところなんだと
思いました。

最終的には人と人が
争わない世をつくることですけど

その大目標はあえて
次に持ち越しにしておく。

次に残しておくことこそ
「光」が伝播するための
最大のポイントなんだと

最後に嬴政自身が
決意するその姿勢でもって

光の伝播する本質
を重ねて強調しているんだと
思いました。

その他の魅力

加冠の儀のシーンにおける
魅力は嬴政の語り
だけじゃなくて

この呂不韋とのやり取りを
聴いていたキャラ
たちの表情も魅力の一つです。

特に嬴政の弟、成蟜(せいきょう)
の妻である瑠衣(るい)
が感無量になってるところの

表情がもうほんと豊かで、
つられて泣きそうになってしまいました~
(瑠衣ちゃん呼び捨てしづらいですね!)

こんな感じでキングダムの加冠の儀は
魅力がいっぱいなので
アニメ4期でここのところが
どう演出されるのか

そこのところを楽しみにしながら
アニメ「キングダム」を
見ていくのもいいんじゃないでしょうか!

ご参考までに

内田樹『武道的思考』筑摩書房、2010年※
原泰久『キングダム 39』集英社、2015年
原泰久『キングダム 40』集英社、2015年
※第三章「武道の心・技・体/良導体であれ」の師から弟子へ波動が伝播するというところから今回の内容を思いつきました。

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